名前の語源

LIBRARY 09 — NAME ORIGINS

名前の語源

名前を見れば、成分や姿が見えてくる。
和名の漢字と英名の言葉、それぞれの意味を知ろう。

鉱物の名前には、ふくまれている元素や、色・形・性質などの意味がこめられています。たとえば「苦灰石」は、苦(マグネシウム)と灰(カルシウム)をふくむ石。名前の部品の意味を知っていると、はじめて聞く鉱物でも、成分や見た目のイメージがわいてきます。ここでは、鉱物の名前でよく見かけるものを中心にまとめました。

JAPANESE NAMES

和名によく出てくる漢字

元素の古い呼び名や、色・形を表す漢字が組み合わさっていることが多いです。

Mg

苦

くマグネシウム

酸化マグネシウム(MgO)を「苦土(くど)」と呼んだことから。豆腐を固める「にがり(苦汁)」の主な成分も、塩化マグネシウム(MgCl2)。

Ca

灰

かいカルシウム

「石灰(せっかい)」のカルシウム。石灰は、生石灰(酸化カルシウム CaO)や消石灰(水酸化カルシウム Ca(OH)2)のこと。

Na

曹

そうナトリウム

ナトリウムの化合物「曹達(ソーダ)」から。ソーダ灰(炭酸ナトリウム Na2CO3)や苛性ソーダ(水酸化ナトリウム NaOH)のソーダ。

Al

礬

ばんアルミニウム

アルミナ(酸化アルミニウム Al2O3)を「礬土(ばんど)」と呼んだことから。ざくろ石の名前によく出てくる。(胆礬〈CuSO4·5H2O〉の「礬」は硫酸塩の意味)

Mn

満

まんマンガン

マンガンの古い当て字「満俺(まんがん)」から。

W

重石

じゅうせきタングステン

タングステンはスウェーデン語で「重い石」。その訳。元素記号の W は、ドイツ語の別名ヴォルフラム(Wolfram)から。

  • 灰重石カルシウムのタングステン鉱物
  • 鉄重石鉄のタングステン鉱物
Mo

水鉛

すいえんモリブデン

モリブデンの古い呼び名。モリブデンという名前も、ギリシャ語の「鉛」から来ている(輝水鉛鉱〈MoS2〉が、方鉛鉱〈PbS〉や石墨とまちがえられていたため)。

Bi

蒼鉛

そうえんビスマス

ビスマスの古い呼び名。

  • 蒼鉛ビスマスそのもの(元素鉱物)
  • 輝蒼鉛鉱輝(金属光沢)+蒼鉛
Sb

安

あんアンチモン

アンチモンの古い当て字「安質母尼(あんちもに)」から。元素記号の Sb と、輝安鉱の英名 stibnite は、どちらもラテン語の stibium から。

As

砒

ひヒ素

ヒ素の漢字「砒素」から。

輝

き金属光沢の硫化鉱物

金属のように輝く硫化鉱物に付くことが多い。(輝石は例外で、ケイ酸塩鉱物のグループ名)

菱

りょうひし形

ひし形の面(菱面体)に割れたり育ったりする炭酸塩鉱物に多い。

方

ほう四角い形

四角い形(方形)に割れたり、育ったりする鉱物に。

  • 方解石割ると菱形の小さなブロックに
  • 方鉛鉱立方体の結晶・割れ方

簾

れんすだれ

細い柱状の結晶が並んだ様子を、すだれに見立てて。

沸

ふつ沸く(わく)

熱すると、ふくんでいる水が出て、沸騰したように泡立つことから「沸石」。英名の zeolite も「沸く石」の意味。

※ 色を表す漢字(黄・赤・紅・藍・緑・白・黒など)も、黄鉄鉱・赤鉄鉱・藍銅鉱のように、そのまま見た目の色を表しています。

ENGLISH NAMES

英名によく出てくる言葉

ギリシャ語やラテン語から来た言葉が多く、色・性質・元素の名前などを表しています。

-ite

石

鉱物の英名の多くは -ite で終わる。ギリシャ語の「石(lithos)」に関係する言葉から。

  • 方解石calc(石灰)+ite → 方解石
  • 石英例外的に -ite で終わらない古い名前

元素名+-ite

その元素の石

ふくまれる元素の名前(ラテン語名のこともある)に -ite を付けたもの。

-lite / -lith

石

lithos(石)そのものから。

Cu

cupr- / chalco-

銅

ラテン語の「銅(cuprum)」と、ギリシャ語の「銅(chalkos)」。cuprum は元素記号 Cu の由来。

Ag

argyr-

銀

ギリシャ語の「銀(argyros)」。元素記号 Ag は、ラテン語の「銀(argentum)」から。

  • 濃紅銀鉱pyr(火)+argyr(銀)→ 濃紅銀鉱
  • 角銀鉱chlor(塩素)+argyr(銀):塩化銀の鉱物 → 角銀鉱

chryso-

金(きん)

ギリシャ語の「金(chrysos)」。金色や、金にまつわるものに。

  • 金緑石金色がかったベリル → 金緑石
  • 珪孔雀石colla(のり):金をつけるのり → 珪孔雀石

rhodo-

ばら

ギリシャ語の「ばら(rhodon)」。ピンク色の鉱物に。

kyan- / cyan-

青

ギリシャ語の「青(kyanos)」。

  • 藍晶石青い石 → 藍晶石
  • 青針銅鉱trich(毛):青い毛のような結晶 → 青針銅鉱

chlor-

緑

ギリシャ語の「緑(chloros)」。元素の塩素(chlorine)も、黄緑色の気体なのでこの名前。

色を表す言葉

いろいろな色

鉱物の英名には、ギリシャ語の色の言葉がよく使われる。

  • 白榴石leuc(白):白い石 → 白榴石
  • コバルト華erythr(赤):赤い石 → コバルト華
  • 赤鉄鉱hemat(血):粉が血のように赤い → 赤鉄鉱
  • 藍閃石glauc(青緑)+phan(見える)→ 藍閃石

pyr-

火

ギリシャ語の「火(pyr)」。火花・火のような色・火にかけたときの様子などから。

  • 黄鉄鉱打つと火花が出る → 黄鉄鉱
  • 苦礬ざくろ石pyropos(火のような目):燃えるような赤 → 苦礬ざくろ石
  • 緑鉛鉱morph(形):溶かして冷やすと、また結晶の形になる → 緑鉛鉱
  • 軟マンガン鉱lusi(洗う):ガラスの色を消すのに使われた → 軟マンガン鉱
  • 濃紅銀鉱argyr(銀):火のように赤い銀の鉱物 → 濃紅銀鉱

-clase

割れる

ギリシャ語の「割れる(klasis)」から。割れ方(へき開)の特徴を表す。

  • 正長石ortho(まっすぐ):直角に割れる → 正長石
  • 斜開銅鉱clino(傾く):斜めに割れる → 斜開銅鉱

clino- / -cline

傾く・斜め

ギリシャ語の「傾く(klinein)」から。斜めに割れることや、結晶の軸が傾いていること(単斜晶系など)を表す。

  • 微斜長石micro(少し):直角から少しだけ傾いて割れる → 微斜長石
  • 斜灰簾石灰簾石と同じ成分で、単斜晶系 → 斜灰簾石
  • 斜ヒューム石ヒューム石の仲間で、単斜晶系 → 斜ヒューム石

人の名前

発見者・研究者など

鉱物の発見や研究にかかわった人の名前を付けることも多い。

地名

見つかった場所

最初に見つかった場所や、有名な産地の名前から。

SAME MEANING

和名と英名、同じ意味が入っているもの

和名と英名で、同じ意味の言葉が使われている鉱物もあります。片方を知っていれば、もう片方も思い出しやすくなります。

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和名英名共通の意味
形・性質
正長石正Orthoclaseまっすぐ・正しい
微斜長石微斜Microcline小さい・少し/傾く・斜め
斜開銅鉱斜開Clinoclase傾く・斜め/割れる
尖晶石尖Spinelとげ・とがった
十字石十字Staurolite十字
鱗鉄鉱鱗Lepidocrociteうろこ
星葉石星葉Astrophyllite星/葉
燐葉石燐葉Phosphophylliteリン/葉
重晶石重Baryte重い
氷晶石氷Cryolite氷
中沸石中Mesolite中間
金剛石金剛Diamondこわれない(adamas から)
蛭石蛭Vermiculite虫
霞石霞Nepheline雲・かすみ
磁鉄鉱磁Magnetite磁石
色・見た目
金緑石金Chrysoberyl金
ばら輝石ばらRhodoniteばら
白榴石白Leucite白
赤鉄鉱赤Hematite血(赤)
藍晶石藍Kyanite青
藍銅鉱藍Azurite青
青針銅鉱青針Cyanotrichite青/毛・針
天青石天Celestine天・空
天藍石天藍Lazulite空の青
斜緑泥石斜緑Clinochlore傾く・斜め/緑
蜜蝋石蜜Melliteはちみつ
成分
水亜鉛土水亜鉛Hydrozincite水/亜鉛
岩塩塩Halite塩
黄銅鉱銅Chalcopyrite銅
菱鉄鉱鉄Siderite鉄
黄錫鉱錫Stanniteスズ

MINERAL QUIZ

光で色が変わる宝石アレキサンドライト。この名前は、だれにちなんでいる?