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標本の産地:ブラジル・ミナスジェライス州
- 化学式
- SiO2
- 分類
- シリカ鉱物(石英の仲間)
- モース硬度
- 7
- 結晶系
- 三方晶系
- 比重
- 2.65
- 条痕色
- 白
- 主な色
- 無色・透明・白・紫・茶・黄・金・ピンク・黒
- 主な産出国
- ブラジル・アメリカ・マダガスカル・日本
- 主な産地
- 菱刈鉱山、乙女鉱山、マウント・アイダ(アーカンソー)、ハーキマー、ムルンタウ鉱山
- 変種・関連
- 水晶、日本式双晶、紫水晶、黄水晶、アメトリン、プラシオライト、煙水晶、黒水晶、紅石英、針入り水晶、虎目石、鷹目石、砂金石、玉髄
- 重要度
- 入門(最初に覚えたい鉱物)
- 図鑑の章
- 第1章 鉱物の基本を、身近な石で(No.1)
※ 図鑑のデータから自動で表示しています。No. は当サイト独自の番号です。
石英とは
石英(せきえい)は、ケイ素と酸素からできた鉱物です(化学式 SiO2、二酸化ケイ素)。地球の陸地をつくる岩石には必ずといっていいほど含まれていて、大陸の地殻では長石に次いで多い鉱物とされています。花崗岩(御影石)の中のガラスのような透明な粒も、海岸や川原の砂のきらきらした粒の多くも、石英です。
純粋なものは無色透明ですが、ごくわずかな不純物や天然の放射線の影響で、紫・黄・茶・ピンクなどさまざまな色になります。色や見た目によって、水晶・アメジスト・シトリン・ローズクォーツ・めのうなど別々の名前で呼ばれますが、どれも鉱物としては同じ石英です。図鑑の第1章では、この石英と、そのなかまの水晶・アメジストなどから、鉱物の基本を見ていきます。
読み方・英語名・別名
学校の理科や図鑑では和名の「石英」、宝石・アクセサリーの世界や時計では英名の「クォーツ」と呼ばれることが多い鉱物です。
- 読み方:せきえい
- 英語名:Quartz(クォーツ。「クオーツ」とも書く)
- 工業での呼び名:珪石(けいせき)。石英を主成分とする岩石や鉱石を、ガラスなどの原料として扱うときの名前
和名「石英」の由来
「石英」は中国から伝わった古い名前で、昔の中国の薬の本(本草書)に「白石英」「紫石英」という石の薬として登場します。「英」は「瑛」と同じで「玉の光」を意味し、玉(宝石)のように光る石という意味の名前です。
おもしろいことに、昔の本草書で「白石英」と呼ばれていたのは、六角柱の形をした透き通った石、つまり今でいう水晶のことでした。石英と水晶の呼び分けは、昔と今とで逆になっているのです。
英名「Quartz(クォーツ)」の由来
Quartz は、中世のドイツ・ザクセン地方の鉱山で使われはじめた言葉です。鉱夫たちが、金属の鉱石と一緒に出てくる役に立たない石(脈石)を指して呼んだのが始まりとされますが、語源ははっきりしていません。
石英と水晶の違い
石英と水晶は、同じ鉱物です。違うのは見た目で、一般に次のように呼び分けます。
- 水晶:石英のうち、六角柱の先がとがった結晶の形がはっきり見えるもの。特に無色透明のもの
- 石英:鉱物としての名前。結晶の形が見えない粒や塊も含めた、すべてのもの
つまり、水晶はすべて石英ですが、石英がすべて水晶というわけではありません。花崗岩の中の粒や白い塊状のものは、ふつう水晶とは呼ばず石英と呼びます。なお、宝石やアクセサリーの世界では、結晶の形にかかわらず透明な石英を広く「水晶」と呼ぶこともあります。
石英の特徴(硬度・割れ方・結晶の形)
硬度7で、ガラスより硬い
石英のモース硬度は7で、モース硬度の基準になっている鉱物のひとつです。ふつうのガラス(硬度5.5前後)よりも硬いので、ガラスをこすると傷がつきます。身近な鉱物の中ではかなり硬い部類で、砂の中に石英が多く残るのも、この硬さと、水にほとんど溶けない丈夫さのおかげです。
劈開がなく、貝殻のような曲面で割れる
石英には、決まった方向にきれいに割れる性質(劈開)がほとんどありません。割ると、貝殻の内側のような丸みのある割れ口(貝殻状断口)になります。これは、同じように白っぽく見える長石(決まった方向に平らに割れる)と見分けるときの大事な手がかりです。
六角柱の結晶と、「右水晶」「左水晶」
すき間のある場所で自由に育つと、石英は六角柱の先が六角すいにとがった結晶になります。柱の面には、横向きの細い筋(条線)が入るのが特徴です。結晶の中の原子は、らせん階段のようにねじれて並んでいて、そのねじれの向きによって、鏡に映したように左右が逆の「右水晶」と「左水晶」があります。見分ける手がかりは、とがった先の大きな面(r面)のすぐ下にある柱の面の、上の角に現れる「x面」という小さな面です。右上の角にあれば右水晶、左上の角にあれば左水晶です。ただ、x面がはっきり見える結晶はまれで、ほとんどの水晶は外から見ただけでは区別できません。
結晶系は三方晶系(六方晶系と書かれることも)
ふだん目にする石英の結晶系は、三方晶系です。六角柱の形をしているのに「六方晶系」ではないのは、原子の並び方の対称性が、六方晶系より少し低いためです(結晶を120°回すと元と重なる、という対称性)。
ただし、図鑑や教科書によっては、石英を「六方晶系」と書いていることもあります。三方晶系を六方晶系の仲間にまとめて、結晶系を7つではなく6つに分ける考え方があるためで、どちらかがまちがいというわけではありません。また、573℃より高い温度で安定な「高温型石英」は、本当に六方晶系です(このあとの「石英のでき方」で紹介します)。
なぜ色がつく?
石英そのものは無色ですが、変種の色にはそれぞれ理由があります。
- 紫(アメジスト):結晶に入り込んだごく微量の鉄が、地中で天然の放射線を浴びて変化したもの(色中心)
- 茶〜黒(煙水晶):ケイ素の代わりに入り込んだアルミニウムが、天然の放射線を浴びてできた色中心
- 黄(シトリン):微量の鉄によるもの。市場に出回るものの多くは、アメジストを加熱して黄色にしたもの
- ピンク(ローズクォーツ):石英の中に入った、目に見えないほど細い繊維状の鉱物によるもの
押すと電気が生まれる「圧電性」
石英の結晶は、押したりゆがめたりすると表面に電気が生まれ、逆に電気をかけると、わずかに伸び縮みします。この性質を圧電性といい、1880年にフランスのキュリー兄弟(ピエールとジャック)が発見しました。電気をかけると、石英の板は決まった速さで正確に振動します。これを時計やコンピューターの「リズムを刻む部品」として使ったのが水晶振動子です(用途の項目で紹介します)。
石英のなかま(変種)
同じ石英でも、色や結晶の大きさ、含まれるものによって、たくさんの名前があります。くわしい話や値段は、それぞれの記事で紹介しています。

写真:JJ Harrison/CC BY-SA 3.0(出典:Wikimedia Commons)
標本の産地:南アフリカ・マガリースバーグ

写真:Rama/CC BY-SA 3.0 FR(出典:Wikimedia Commons)

写真:Parent Géry/パブリックドメイン(出典:Wikimedia Commons)
標本の産地:中国

写真:James St. John/CC BY 2.0(出典:Wikimedia Commons)

写真:Géry Parent/パブリックドメイン(出典:Wikimedia Commons)
標本の産地:ブラジル・ミナスジェライス州

写真:Rama/CC BY-SA 3.0 FR(出典:Wikimedia Commons)
結晶が見える石英
- 水晶(ロッククリスタル):無色透明で、結晶の形がはっきりしたもの。石英のなかまの代表
- アメジスト(紫水晶):紫色のもの。宝石として最も人気のある石英
- シトリン(黄水晶):黄色〜オレンジ色のもの。天然の色のものは少ない
- アメトリン:アメジストの紫とシトリンの黄が、1つの結晶に共存するもの
- 煙水晶(スモーキークォーツ):茶色〜灰色のもの。ほぼ黒いものは黒水晶(モリオン)と呼ばれる
- ローズクォーツ(紅石英):ピンク色のもの。ふつうは結晶の形がない塊で見つかる
- プラシオライト:緑色のもの。多くはアメジストなどを加熱処理したもの
- ルチルクォーツ(針入り水晶):ルチルという鉱物の金色の針が入った水晶
目に見えないほど細かい結晶の集まり
- 玉髄(カルセドニー):顕微鏡でしか見えないほど細かい石英の結晶が集まったもの。ろうのようなつやがある
- めのう(瑪瑙・アゲート):玉髄のうち、縞模様のあるもの
- オニキス:白と黒など、平行でまっすぐな縞のめのう
- カーネリアン(紅玉髄)・クリソプレーズ(緑玉髄):赤橙色・緑色の玉髄
- ジャスパー(碧玉):不純物を多く含み、不透明な玉髄
ほかの鉱物と一緒になった石英
- タイガーアイ(虎目石)・ホークスアイ(鷹目石):青石綿の繊維が石英に置き換わったもの。光の筋が動いて見える
- アベンチュリン(砂金石):雲母のなかまの小さな板が入って、きらきら光る石英の集まり(正確には岩石)
石英のでき方
石英は、地球のいろいろな場所で、いろいろな方法でできます。
- マグマが冷えるとき:花崗岩などのマグマが冷えて固まるとき、石英はほかの鉱物より後のほうで結晶になります。そのため、先にできた長石や雲母のすき間を埋める形になり、きれいな結晶の形は見えません
- ペグマタイトや岩のすき間で:マグマの最後に残った液や、地下の熱い水(熱水)が、岩の割れ目や空洞にしみこみ、そこでゆっくり育つと、形の整った大きな水晶になります
- 熱水の通り道(鉱脈)で:熱水が冷えると、溶けていた二酸化ケイ素が石英として沈殿します。金や銀の鉱石は、こうした石英の脈の中に含まれていることがよくあります
- 砂や堆積岩の中に:石英は硬く、水にもほとんど溶けないので、岩石が風化して崩れても最後まで残ります。こうして集まった石英の粒が砂になり、やがて砂岩や珪岩になります
石英は、573℃より低い温度で安定な鉱物です。それより高い温度では、原子の並び方が少し違う「高温型石英」(六方晶系)になり、冷えるときに今の石英(低温型・三方晶系)に戻ります。火山岩の中には、高温型だったころの形(六角形のそろばん玉のような形)をそのまま残した石英の粒が見つかることがあります。
石英の産地(世界・日本)
石英は世界中のどこでも見つかる鉱物ですが、美しい結晶の標本で知られる産地には、次のような場所があります。
- ブラジル(ミナスジェライス州・バイーア州など):水晶やアメジストなど、石英のなかまの世界的な大産地。このページの一番上の写真もミナスジェライス州の水晶
- アメリカ・アーカンソー州:透明度の高い水晶の群晶で有名
- スイス・オーストリアのアルプス:煙水晶や、ねじれた形の結晶など、昔から名品の多い産地
- マダガスカル:大きな水晶や、ローズクォーツの産地
日本でも水晶は各地で採れますが、とりわけ有名なのが山梨県です。金峰山を中心とした花崗岩地帯に点在するペグマタイトから、乙女鉱山・竹森・水晶峠・黒平などで、昔から質のよい水晶が採れてきました。
日本の名前がついた「日本式双晶」
2つの水晶が、約84度の角度でV字形にくっついたものを日本式双晶(英語では Japan law twin)といいます。平たい板のような形になることが多く、山梨県の乙女鉱山などで見事な標本が採れたことで知られ、世界の鉱物愛好家のあいだでも日本の名前で呼ばれています。

写真:Marie-Lan Taÿ Pamart/CC BY 4.0(出典:Wikimedia Commons)
標本の産地:ザンビア
石英は何に使う?用途と価値
石英は、身の回りのたくさんのものの原料になっています。
- ガラス:窓や瓶のガラスの主な原料は、石英の粒でできた砂(珪砂)
- 石英ガラス:ほぼ純粋な二酸化ケイ素だけで作ったガラス。熱に強く、紫外線もよく通すので、光ファイバーや、半導体を作る装置の部品などに使われる
- シリコン(ケイ素):石英から酸素を取り除いて作る。半導体や太陽電池の材料になる
- 水晶振動子:圧電性を利用した部品。電気をかけると一定の速さで振動するので、時計・スマートフォン・パソコンなど、時間やタイミングを正確に刻む必要がある機械のほとんどに入っている
水晶振動子には、天然の水晶ではなく、工場で育てた人工水晶が使われます。高温・高圧の水の中で石英を溶かし、種になる結晶の上にゆっくり育てる方法(水熱合成法)で作られます。また、半導体の材料のシリコンを溶かす「るつぼ」には、とても純度の高い石英が必要で、その原料の多くはアメリカ・ノースカロライナ州のスプルースパインという町の鉱山で採れています。
石英そのものはありふれた鉱物なので、塊や小さな結晶なら安く手に入ります。標本や宝石としての値段は、透明度や色、結晶の形によって大きく変わるので、水晶やアメジストなど、それぞれの変種の記事で紹介しています。
石英の雑学・エピソード
- 「クオーツ時計」のクオーツは石英のこと:1969年、セイコーが世界で初めてクオーツ式の腕時計「クオーツ アストロン」を発売した。それまでの機械式の時計より、けた違いに正確だった
- 誕生石にも石英のなかまが:アメジストは2月、シトリンは11月の誕生石になっている
- 石英の粉には注意が必要:石英の細かい粉を長年吸い込み続けると、珪肺という肺の病気になることがあり、石を削る仕事や鉱山で働く人の職業病として知られている
石英と似たものの違い・見分け方
石英は、白っぽい長石や方解石、そしてガラスとよく間違われます。硬さや割れ方を比べると見分けられます。
| 石英 | 長石 | 方解石 | ガラス | |
|---|---|---|---|---|
| モース硬度 | 7 | 6 | 3 | 5.5前後 |
| 割れ方 | きれいには割れず、貝殻のような曲面 | 2方向に平らに割れる | 3方向にきれいに割れる(ひし形) | 貝殻のような曲面 |
| 結晶の形 | 六角柱の先がとがった形 | 短い柱や板の形 | ひし形・犬の牙のような形など | 結晶ではない |
| うすい塩酸をかける | 泡は出ない | 泡は出ない | 泡が出る | 泡は出ない |
| 見た目のヒント | 透明〜白。ガラスのようなつや | 白・ピンク・灰色。不透明なものが多い | 透明〜白。爪より硬いが、ナイフで傷がつく | 中に丸い気泡が入っていることがある |
名前が似ていて混乱しやすいものも、まとめておきます。
- 玉髄・めのう:石英と同じ鉱物で、結晶がとても細かいもの。見た目はまったく違うが、成分も硬さもほぼ同じ
- 珪石:石英を主成分とする岩石や鉱石の、資源としての呼び名。鉱物の名前ではない
- 石英ガラス:石英を溶かして固めたもの。成分は同じでも、原子の並びが乱れた「ガラス」になっていて、結晶ではない
- オパール:成分は二酸化ケイ素に近いが、水を含み、結晶になっていないので石英とは別もの
石英の扱い方と保管の注意
石英は硬くて丈夫な鉱物で、飾ったり手で触ったりするぶんには心配はいりません。ただし、次の点には気をつけましょう。
参考文献
- Quartz – Handbook of Mineralogy(Mineral Data Publishing)
- 石英 – Wikipedia
- Quartz – Wikipedia(英語)
- 吉野政治(2016)「水晶の語誌」同志社女子大學學術研究年報 67
- 山梨の水晶 – 山梨県
- アストロン ヒストリー – セイコーウオッチ
- 人工水晶の育成と規格 – 村田製作所
- Goreva, Ma & Rossman (2001) Fibrous nanoinclusions in massive rose quartz: The origin of rose coloration. American Mineralogist
- Causes of Color(アメジスト・煙水晶の色) – WebExhibits
- Two mines in North Carolina are key suppliers to the world’s semiconductor industry – TechSpot(英語)
- Reducing exposure to respirable crystalline silica (quartz) – WorkSafe WA(英語)